161-170










(161)


『ボク、どんどん思い出すハンニャーマン。
 どうも口でひょーさんには勝てない…が、
 ある事を思い出し、反撃に出てみたのサ。

「…ひょーさん、今はっきり思い出したけど、
 あれはどう考えても貴方が悪いのサ」
「何故ダ
「何故って!いきなり襲って来たでしょう!?
 逃げるのは当たり前の行動なのサ!
 むしろ…、何で攻撃して来たのか、
 こっちが聞きたいのサ!」


「…怪しかったからダ」
「ひょーさんに言われたくないのサ!!」


 やっぱり勝てそうにないのサ…』













(162)


『ボク、唯一思い出せないハンニャーマン。
 ひょーさんに、どうやって言い返そうか
 考えていると……変な事を言われたのサ。

「…確かに先にしかけたのは私ダ。
 だが、それ以上にやり返したのはお前ダ」

「………はい?何を言ってるんですか?」

「…覚えてないノカ?
 あの時、偶然ハンニャーマンのが取れ、
 容赦なく私を攻撃してきたのヲ?」

「……ボクがひょーさんに!?
 え……あっ……いやいやいや!
 そんなはずは……………………うっ


 一瞬考えた後、否定をしたけど……
 ひょーさんが思いっきり睨んで来たのサ…』











(163)


『ボク、驚愕するだけのハンニャーマン。
 ボス・ひょっとこは淡々と話を続けたのサ。

「…ハンニャーマンは、面を付けている時と
 そうでない時の対応が全く違ウ。
 付けてる時は逃げてばかりで戦わナイ。
 付けてない時は逆に好戦的ダ。
 まるで、『別人』と思う程違ウ…」

「………」
「…だが、私は別人だと思った事はナイ」
「………え?」

「別人に見えるのは、
 『わざとそう見えるようにしている』
 と思ってイル。
 面が取れた後の事は覚えてないと言うが、
 それは『嘘』だと思ってイル」


「ちょ……、ひょーさん!
 それじゃあ、ボクが騙してる
 みたいじゃないですか!」
「……」


 ……本当にそう思ってるの?











(164)


『ボク、一大決心ハンニャーマン。
 ひょーさんは、ボクの態度を見て……
 少しだけ口調を和らげたのサ。

「…騙しているとは言っていない」
「!」

「ただ、『覚えていない』のはおかしいと
 言っているだけダ。
 …覚えていなければ、面の話をされた時に
 逃げ出すはずがナイ。
 …覚えているからこそ逃げるんダロウ?


「…………。
 覚えて、ないのサ…。
 でも、微かに…夢のような記憶は
 チラホラあるから…」


 …ボクは、覚悟を決めて話す事にしたのサ』











(165)


『ボク、深呼吸するハンニャーマン。
 まず、最初に誤解を解こうとしたのサ。

「…さっき『別人』の振りをしてるように
 見えるって言いましたが……、
 ボクはそんな事してないし、本当に別人と
 いうわけでもありません。
 …そんな振りをしたって何の得もないし、
 本当に別人だったら…ずっと面を
 外してた方がいいじゃないですか」
「…?」

「…『逃げてばかりで戦わない』
 面をつけてるボクは腰抜けなんでしょう?」

「……事実ダロウ?」
「うっ」
「…それで、何故別人のように見エル?」


「………ずっと面をつけていたから」


 ちょっと話す気が失せたけど……、
 ボソボソと…面の話をしたのサ』











(166)


『ボク、やっぱり後悔ハンニャーマン。
 ボクの発言にひょーさんは聞き返したのサ。

「ズット…?」
「…はい。小さい時からずっと面をつけてて、
 …面を取るのに慣れていなくて、
 …それで……」
「…」

「…ボクは…面を取ると恐怖とか緊張で
 頭が真っ白になって、
 ………我を忘れてしまうのサ

「それだけカ?」
……それだけと言うと」
「緊張しているから『別人』に見え…、
 我を忘れるから『何も覚えてない』…ト?
 …それでは、酔っぱらいと変わら…」

「だから言いたくなかったのサ!!」


 …ボクは顔を押さえてワッと泣いたのサ』












(167)

『ボク、穴に入りたいハンニャーマン。
 頭を抱えてると追い打ちをかけられたのサ。

「…大体。
 何故、面を被るようにナッタ?」

「それは…って!
 何でそこまで言わないといけないのサ!」
「ついでダ。言エ
(うう…。命令口調なのサ…)


「……死人のような目をしてると言われて」


「………」
「………」
「…それだけカ?」
「だから言いたくないって言ったのサ!!」


 …二度目の叫び声を上げたのサ』












(168)

『ボク、やつれそうなハンニャーマン。
 精神的にも(よく考えたら肉体的にも)
 傷つき、夕暮れに黄昏れそうになったのサ。

「…行方不明になった理由も判っタ。
 ナマハゲ44号がうるさいから戻るゾ」

「はい………あっ。
 ……あのー、ひょーさんが機嫌悪かったの、
 もしかして大家さんが…」
「戻るゾ」
「………はい。
 でも、ボク…足がこの状態だから…」
「だから、これを持って来タ」


 そう言うと、ひょーさんは上着を脱ぎ
 始めたのサ。
 ……何か物凄く嫌な予感が…』














(169)

『ボク、何か選びたくないハンニャーマン。
 ひょーさんは脱いだ上着でテキパキと…、
 ボクを小包のように包み上げたのサ。

「ひょ…ひょーさん?」
「ハンニャーマン。
 『あの部下』に運ばれて帰る方法と、
 『早く帰られる』方法…どちらかを選ベ」

「え…?
 そ、そりゃあ…早く帰れる方がいいです
 けど………どうやって……?」


 …嫌な想像をしてしまったけど、
 ……まさかそんな事が出来るはずが…』













(170)

『ボク、それだけはやめてハンニャーマン。
 ひょーさんは上着で包んだボクを持ち上げ
 視線を上に向けたのサ。

「…もちろん、このまま崖の上に投ゲル
「な、投げるって…!」
「これが1番早イ」
「早いだろうけど!
 この高さはいくら何でも無理……
 …って待て待て待てぎゃあああああ!


 …ひょーさんは…ボクの制止も聞かず
 容赦なく投げ飛ばしたのサ』